第3巻 第2号(2021年3月)

2021年 3月 第3巻 第2号 掲載 研究報告査読なし

  • 欺瞞的コミュニケーションにおける動機と上下関係の影響
  • The effects of motives and hierarchical relationships in deceptive communication
  • 山本 恭子1)(神戸学院大学心理学部)
  • Kyoko Yamamoto1)(Department of Psychology, Kobe Gakuin University)

要 旨

 本研究は欺瞞動機と嘘をつく対象との上下関係によって,欺瞞的コミュニケーションの頻度や感情が異なるかを検討した。欺瞞動機(利己的な嘘,受容を求める嘘,葛藤回避の嘘,利他的な嘘)と上下関係(先輩,友人,後輩)を操作した場面想定法による質問紙を用いて,嘘の頻度や嘘にともなう感情を調査協力者に評定してもらった。その結果,欺瞞動機の主効果が有意であり,利己性が高い嘘ほど嘘をつく頻度が低く,不安,嫌悪感,罪悪感といったネガティブな感情が高かった。また,嘘の頻度と罪悪感においては,欺瞞動機×上下関係の交互作用が認められた。下位検定の結果,受容を求める嘘や利他的な嘘は友人に対して用いられやすいこと,利己的な嘘に対する罪悪感は,先輩や友人よりも後輩に対して弱まることが示された。ただし,全般的に嘘行動に及ぼす上下関係の効果は小さく,本研究で想起させた関係の質が影響を及ぼした可能性が議論された。

Key words : 嘘,上下関係,欺瞞動機

Kobe Gakuin University Journal of Psychology
2021, Vol.3, No.2, pp.65-72

注 1)本研究は著者の指導のもと藤原早希さんが作成した2015 年度神戸学院大学卒業論文の内容を加筆修正したものです。ここに記して感謝いたします。

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