2021年 12月 第4巻 第1号 掲載 原著論文査読あり
要 旨
本研究では,半構造化面接を用いて語りの中から高齢者のもつ忘却に関する認識を明らかにすることを目的とし,面接データを量的に整理して探索的に検討した。調査協力者は65~70歳の高齢者5名であった。調査協力者は「忘れることはあまり良くないと思うけど」と前置きしつつも,総じて必要な精神機能であると概ね肯定的に語っていた。記憶方略については外的記憶方略について語ることが多く,予定や約束といった展望記憶の失敗を避けようとする傾向があった。一方で,忘却を自然現象ととらえており意図的に統制しようとはしない傾向があることが示唆された。これまでの高齢者の記憶の自己評価に関する研究では,一貫した研究結果がみられていなかった。高齢者大学校に通う高齢者を対象とした本研究では,加齢による記憶能力の低下は年齢を重ねれば当然であるとうまく折り合いをつけている可能性が示唆された。
Key words : 忘却に関する認識,高齢者,半構造化面接,テキストマイニング,記憶の自己評価
Kobe Gakuin University Journal of Psychology
2021, Vol.4, No.1, pp.13-22