2023年 12月 第6巻 第1号 掲載 原著論文査読あり
要 旨
私たちは時として,自身の行為が不正行為になるか否かを明確にしないまま,その行為を行うことがあり,利己的誤りと呼ばれている。本研究では,不正行為に対する認識が利己的誤りに及ぼす影響を検討した。実験には108名が参加し,利己的誤りを誘発するサイコロ課題を176試行行わせた後,不正行為に対する認識として「嘘をつくことに対する認識尺度」に回答させた。この際,サイコロ課題における誤り回数だけではなく,報告しなければならなかったサイコロの目と,実際に報告したサイコロの目の差分から逸脱ポイントも検討した。結果として,嘘は上達しないと考える人では誤り回数が多かったものの,逸脱ポイントがマイナスとなっていたことから,単なる誤りであることが考えられた。そして,嘘は上達すると考える人や嘘に肯定的な人は,積極的に利己的誤りを行うことで利益を得るのではなく,誤りが自己の損失となる状況でなるべく正確に回答することにより,損失を回避した可能性が示唆された。
Key words : dishonest behavior, ambiguity, unethical behavior.
キーワード : 不正行為,曖昧性,非倫理的行動
Kobe Gakuin University Journal of Psychology
2023, Vol.6, No.1, pp.29−37