2022年 3月 第4巻 第2号 掲載 原著論文査読あり
要 旨
欺瞞は私たちの日常にありふれた現象であり,時として欺瞞であると意図せず欺瞞を行うこともある。これまで黒川・秋山(2020)において,行為者にとって欺瞞かどうかが明確に認識できない意図の曖昧な欺瞞と意図の明確な欺瞞を行動反応から検討している。本研究では,黒川・秋山(2020)で分析されていない生理指標に着目し,検討を行った。この際,他者に対して意図の明確な欺瞞,意図の曖昧な欺瞞,もしくは正確な反応を行うかどうかを行為者自身が選択可能な欺瞞誘発課題を参加者に行わせ,欺瞞を行った際の心拍率(以下,HR)を測定した。その結果,意図の明確な欺瞞において欺瞞後,初期の段階において HR の減速が見られ,これは特に欺瞞回数を重ねるごとに顕著であった。一方で,意図の曖昧な欺瞞は課題を通して HR に変化は見られなかった。同様の課題を用いて行動反応を検討した黒川・秋山(2020)の研究と併せて,繰り返し欺瞞を行うごとに意図の明確な欺瞞が拡大することが示唆された。
キーワード : 欺瞞、曖昧性、心拍率、送り手受け手課題、非倫理的行動
Kobe Gakuin University Journal of Psychology
2022, Vol.4, No.2, pp.57-66