2022年 3月 第4巻 第2号 掲載 研究報告査読なし
要 旨
両側頭頂後頭葉病変により視覚性注意障害を呈した症例を経験した。症例は 25 歳,右利き女性。頭部 MRI 画像にて両側頭頂後頭葉に病変をみとめた。視野欠損の有無の確認は困難で眼球運動制限はなかった。本例は単一の対象認知は良好だが,複数の対象を同時にとらえることが困難だった。視覚性注意の範囲は,音読,照合,模写など詳細な視覚的分析を必要とする場面でより狭まった。また,視覚対象が単一のまとまりをもてば,大きさ・複雑性に関わらず対象を同定できたことから,視覚性注意の範囲は,認知的処理の深さや目と手の協調運動などに影響されダイナミックに変化すると考えらえた。視覚性注意障害のリハビリテーションは,症例の特性に合わせて見ることを意識する度合いを考慮しながら支援することが求められる。
キーワード : 視覚性注意障害,背側型同時失認,リハビリテーション
Kobe Gakuin University Journal of Psychology
2022, Vol.4, No.2, pp.73-77