第7巻 第2号(2025年3月)

2025年 3月 第7巻 第2号 掲載 研究報告査読なし

  • 「道化師になること」のオートエスノグラフィ
    ―欠点・弱点が個性になるプロセスに関する一人称的研究―
  • An autoethnography on becoming a clown: A first-person exploration of the transformation of flaws and weaknesses into individuality
  • 岡村 心平(神戸学院大学心理学部)
  • Shimpei Okamura(Department of Psychology, Kobe Gakuin University)
 

要 旨

 本研究は,公認心理師であり臨床心理学者でもある筆者が,研究の一環として出会った道化師(クラウン)の養成講座を受講し,その体験を通じて自身に起こった変化を記述するオートエスノグラフィの試みである。クラウンになる過程は自身の弱点が「個性」へと変化していくプロセスであり,その内実を一人称の視点から検討することが本研究の目的である。筆者自身がクラウンになっていく講座受講のプロセスを対象とし,講座の中で練習したクラウン・ルーティンや,キャラクター・ディベロップメントなど各プログラムの内容を踏まえ,その際に起こった自身の変化や葛藤,驚きについて再帰的に吟味しつつ,個性化の過程や同期受講生とのコミュニティの意義,またクラウニング講座自体がある種のオートエスノグラフィの実践形態の可能性について考察した。本研究を通じて,自身の欠点が共有され,それが当事者性と結びつきながら魅力として機能する側面が明らかになった。

Key words : Clown, Clowning, autoethnography, fieldwork.
キーワード : 道化師(クラウン),クラウニング,オートエスノグラフィ,フィールドワーク

Kobe Gakuin University Journal of Psychology
2025, Vol.7, No.2, pp.101−115

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