2026年 3月 第8巻 第2号 掲載 研究報告査読なし
要 旨
本稿では,経験を言語化する試みであるライフストーリー・レビューについて,フォーカシングおよび体験過程理論の視点から検討を行った。ライフストーリー・レビューは,「うまく言葉にならない」過去経験を,対話により言語化し,オルタナティブ・ストーリーとして新たに意味づける実践である。本稿では,この「うまく言葉にならない経験」を体験過程理論における「未完了のプロセス」と捉え,象徴化(言語化)と相互作用によってどのように体験過程が再構成化され,新たな意味が生成されるかを整理した。さらに,あえて傾聴せず積極的な質問を推奨するライフストーリー・レビュー独自の「聴き方」がRogersの中核三条件(1957)に基づいていること,また聴き手の質問は相互作用におけるimplicitな機能によるものであるとの視点を提示した。一方,「気持ち」の扱い方や,「語りの厚み」とは何かについては,さらに検討が必要であるとした。
Key words : life-story review, storytelling session, Focusing, Experiencing theory, incomplete processes.
キーワード : ライフストーリー・レビュー,語りのセッション,フォーカシング,体験過程理論,未完了のプロセス
Kobe Gakuin University Journal of Psychology
2026, Vol.8, No.2, pp.93−98